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2014年6月12日木曜日

ボダムのインダストリアルデザイン


ボダムの奥深い構造

ボダム(BODUM)のマグカップとグラス。潔いほどにシンプルなデザインですが、これが、知るほどに奥深い構造でできています。
ボダムはキッチンウェアブランドですが、その根底は、インダストリアルデザインの会社じゃないかと思います。デザインのなかでもインダストリアルデザインというのは何を特徴としているかというと、機能をデザインする、ということです。だから「潔いほどシンプルなデザイン」と先に書いたけど、シンプルなだけでは何も意味を持ちません。そこに機能がないと。シンプルであることは、機能的な理由になっていなければいけない。
ヨーガン・ボダム氏が見いだした中国の茶器、そこから生まれたのがボダムのデザインを象徴するダブルウォール構造です。つまり二層構造のガラス。熱い飲み物を入れても表面が熱くならないため持ちやすい。冷たい飲み物を入れても結露で表面がべちゃべちゃにならない。
ヨーガンさんが言うには、ダブルウォール構造を作り出すこと自体は特に難しいことではないそうです。でも、熱い飲み物を入れると二層中の空気が膨張しグラスが破裂する危険がある。これを解消するために底面に穴を開けたら開けたで、今度は冷たい飲み物を入れたときガラス層の間に結露ができ中で溜まってしまう。この問題は、二層構造にする限りは物理現象として回避できないのです。
さあ、どうしようかとなったとき、とても小さなイノベーションが起きました。底面にあけた穴をシリコン栓でふさいだのです。これで、普段は栓をふさいでいるので中で結露ができにくく、熱い飲み物を入れても穴があいているので中で空気が膨張してもちゃんと抜けていく。
これがインダストリアルデザインです。二次元上で線を引いてビジュアルデザインしているのではない、ということですね。もっと複雑な思考を展開し、工学的なデザインとして結実させている。飲み物を入れたとき二層構造によって液体が宙に浮いたように見えるというのも、工学的に考えたデザイン上の仕掛けになっています。
ボダムの生み出すモノは奥深い構造でできている、といったのこはこういうことなのです。

底面には穴があり、それをシリコン栓でふさいでいる

飲み物を入れたとき二層構造によって液体が宙に浮いたように見える



デンマークからドイツ語圏へ

ボダムは、数々のモダンインテリアの巨匠たちを生んだ北欧はデンマークで創業した会社です。そして1978年にスイスのルッツェルンに本社を移転しています。スイスという国名で考えるより、これはドイツ語圏に移転したということです。デンマークの人口は500万人程度で国内市場があまり大きくない。ドイツ語圏となれば1億規模の市場が生まれる。そういう面もあっての移転だったと思いますが、ドイツというと、インダストリアルデザインのルーツであるバウハウスを生んだ文化であり、デザインとインダストリアルの親和性がとても高い、そんな文化背景をもっています。
ボダムは北欧デザインの流れで登場し、ドイツのインダストリアルデザインと融合して発展した。そんな気がします。

移転からわずか2年後、1980年には社内にPI-Designというデザイン部門を設立しています。プロダクトデザインから店舗デザイン、広告デザインまで、ボダムに関することはすべて流通の始まりから終わりまで自社内でデザインしてしまおうというわけです。ボダムはキッチンウェアブランドですが、その根底はインダストリアルデザインの会社だと最初に書いたのは、そういうことです。

ボダムのプロダクトで、IFデザイン賞やレッド・ドット、グッド・デザイン賞といった世界的に評価の高いデザインアワードにかぎっても、受賞しているモデルは数十種類あるようです。
ちなみに現CEOのヨーガンさんは創始者ピーター・ボダム氏の子息で、スイスへの移転、インダストリアルデザインブランドとして大きな展開を果たしてきた人ですが、そのヨーガンさんがもっとも大きな影響を受けたインダストリアルデザイナーが、ディーター・ラムスです。インダストリアルデザインにおける機能主義派の巨匠といわれ、SK-4レコードプレーヤーや35 mmフィルムスライドプロジェクター「D」シリーズなどの名作を産みだし、アップル社のジョナサン・アイブといったデザイナーにも影響を与えた人です。

ディーター・ラムスがデザインしたSK-4レコードプレーヤー
参照:
http://www.en.ozartsetc.com/2012/01/02/sk4-record-player-by-dieter-rams/

こうしたエピソードから想像できることは、マグカップやタンブラーのデザイン、実はその背後に、こんな工学機器のデザイン感覚があるだろう、ということです。レコードプレイヤーやスライドプロジェクターといったメディア家電デザインにも繋がる機能と美への感覚が流れていると推察できることです。ボダムのプロダクトは、そういう次元でデザインという世界へアクセスしている。実際、今ではミキサーなどキッチン家電のプロダクトも出しています。

こんなスタンドミキサーなどキッチン家電も出している
参照:
http://www.weddinggiftsdirect.com.au/blog/?p=3636



手仕事の感覚と工学の感覚

一方で、手仕事の職人世界で製造している。
例えばここで紹介したBISTROシリーズのマグ、PAVINAシリーズのタンブラーグラスは、吹きガラスの製法による職人の手仕事で作られています。ボロシリケイトガラスという耐熱ガラスで、一般的なガラスと比べ、耐熱性が高く、薄くできていて、きわめて職人的なプロダクトです。

吹きガラスの手仕事であることを示すマーク

そう考えていくと、ボダムには、芸術や工芸といった手仕事を生活の中へ取り込もうとする、まるで19世紀のウィリアム・モリスみたいな感覚があるといえます。同時に、家電へと繋がっていく工学デザインの感覚、20世紀のバウハウスに端を発する感覚もある。
どっちかを切り捨てる形で進んでいくのが、プロダクトデザインの運命のようなところがありますが、不思議とボダムには、両感覚を含み込みながら並走させるところがあるようで、そこがブランドのかけがえのない価値になっています。

ボダムのマグカップを生活の中で使うということは、そういう感覚を生活の中に溶かし込んでいくということだと思います。




写真のアイテム(右から)




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