内羽根式のドレスシューズ、これは持っておいてほしいです。ホールカットと並んでもっともキレイなスタイルのドレスシューズです。靴を真上から見たときよくわかります。外郭の出っ張りがあまりなく、継ぎ目の少ない滑らかなシルエットを描いてくれます。
さらに実際面としても使える靴です。畏まったシチュエーション、冠婚葬祭とか取引先での営業とか、そういう儀礼を要する場ではやはり内羽根式を履くべきでしょう。内羽根式は「完全オフィシャル対応靴」と思っていただければと思います。
じゃあ砕けたシチュエーションでは場違いかというと、見た目の美しさから、1ファッションアイテムとしてもよく機能する。ここが有難いところです。デニムにあわせたってカッコいい。
ところで、内羽根式と並んでビジネスシューズとしては外羽根式も人気が高いです。外羽根式は外羽根式の良さがありますが、それはさておいて、畏まった場ではやはり内羽根式がベターです。極言すれば、外羽根式は持っていなくても社会人として問題はないです。でも、内羽根式は持っていないとなると少し困る場合があるわけです。さきほどの儀礼的な場のように。
どっちもレースアップの紳士靴で、似たようなデザインです。社会的な意味づけが違うだけで、靴それ自体は内羽根も外羽根も差なんてあまりない...。でも革靴との付き合いが長くなってくると、だんだん違いを意識するようになります。むしろ両者は逆方向をむいているんじゃないかくらいの隔たりを感じます。
なんで逆方向かというと、同語反復的になりますが、外羽根というのはやはり外を向いているわけです。レースの締め具合で甲部分の開き具合を調整できるから、戸外のアクティブな状況でも疲れにくい、という意味での外。まあそういう理由もあるのですが、それは現象の1つで、そもそもの元型が外を向いている。始まりが戦闘用のロングブーツなのです。で、その後は狩猟用、屋外労働用の靴として発展している。戦争職人または肉体労働者のフィールドワーク用シューズです。ルーツがこんな具合なので、やはり取引先に履いていくのは、いささか礼を欠きます。
じゃあ内羽根式は何なのかというと、こちらは内を向いている。もともとイギリスの宮廷靴で、それからサロンのような社交場で履かれる靴として、また室内執務用の靴として発展しています。そもそも庶民の靴じゃない。いろんな意味で「お高い靴」なわけです。
こんな次第で、出自というのは、その後どう使われ方が変わっていこうが、遺伝子のような通底音としてその記憶をとどめているようです。ルーツはアンダーウェアだったシャツ、と同様ですね。だから、ルーツは一度見ておいたほうがいい。
ちなみに、オーダーシューズの世界でもっとも注文が多いのが内羽根式だといわれています。靴についてのこだわりとその志向先が、この1つのエピソードによく表れているのじゃないでしょうか。
※DNA of Balmoral Shoesの続きはコチラから。
Text by Kazunori.I / Post by Satoshi.M
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