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2013年11月5日火曜日

メンズも細ベルトを締める、という習慣。

メンズ服の世界はいろいろルールがうるさいですからね。
ジャケットの袖から出るシャツのカフは3cmであるべきだとか、少なくとも裾はお尻を隠すべきであるとか、外羽根式シューズはちゃんとした場所へ履いて行ってはいけないとか。とにかくちゃんとやろうと思うと、ディテールまで細かいルール、伝統の美意識からくる暗黙の事項がいっぱいある。
こんながんじがらめのすでに決まってしまっている世界が、果たして自由なモードなのか?
これがモードの現実なのか?
モードは、ほら、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクのこのスーモみたいに、もっと自由でクリエイティブで楽しいものじゃないのか?
そう思うことが僕にはあります。


「何を言ってるの。男がこの社会で一人の大人として周囲と関係を切り結び生きるための服と、人間の感性を解放する祝祭としてのモード服は違うんだよ」

人はそう言うのでしょうが、でも、大前提として人は服を着て生きるのであって、生きることと服が直結している。それがこんなふうに性格分裂しているのは何かが間違っている、と僕は思います。

本来、モードは服についての人の感性を揺り動かしながら社会に働きかけ、社会をより新しく作り替えていく力を持たなくちゃいけないのに、コレクションで試みられるそうしたユニークなモードが現実社会と切り離され、コレクションの中で閉じてしまっている。
じゃあ現実はどうかというと、相変わらずルール、常識、伝統の美意識をベースにして成立している。それは、こういうルールのほうが考えとして根が深く、服の本質に近く、信頼に足る人間の感覚だからかもしれません。

そうはいっても、時代とともに動いている部分、変化している部分もある。でもそれはデザイナーの力というより、ストリートの力だったりする。
1960年代まではみんなカジュアル着も普通にスラックスパンツを履いていたわけです。でもジーンズを履き始め、今じゃ職場でも履ける仕事があるし、ジーンズはメンズ服として当たり前になりました。この流れを誰が作ったのかといえば誰でもなく、ストリート発生です。むしろデザイナーズモードの世界は、それまで伝統に則ってジーンズをずっと退けていた。最近のスウェットパンツの隆盛もやはりストリートです。デザイナーは結局伝統を重んじ、新しい服の世界を作るよりは、世の中の現象を後追いで形にしているようです。

最近の具体的な話をすると、十年前までは細いベルトといえばウィメンズのベルトと相場が決まっていました。何でだろう? 女性の方が華奢でスリムなラインを強調すべきだから細ベルトが合うの? いや、女の人でも太った人はたくさんいます。女の人がスリムさを強調すべきで、男はそうではないなんていう根拠はどこにもないです。それに、ウィメンズには極太ベルトもあります。つまり「細ベルト=ウィメンズ」なんていう等式には何の根拠もないのですが、ずっと、それはウィメンズのベルトだという暗黙のルール、習慣・常識が働いていたわけです。

ベルトの太さですよ。ベルトの太さが人間の衣服の何の本質に触れているのかわからない。そんな部分にすら習慣・常識に引っ張られるまったく保守・不自由な世界がモードの世界だなんて、どういうわけだろう?

そして新しい習慣が始まりました。つまり、メンズも細ベルトを締める、という習慣です。ディオールオムを筆頭に、メンズ服がどんどんスキニー化・股浅化していく中で、装いも無機質にシャープになっていき、ネクタイもナロー化、それに合うベルトも細ベルト化し、メンズ服とウィメンズ服も少しずつボーダレス化、ユニセックス化していく。
来季ウィメンズはフェミニンが復活と言われていますが、こういうのはミクロな流行変化で、10年、数十年スパンの大きな流れではユニセックス化、ノンセックス化していて、この流れは相変わらず続く、つまり、習慣化すると思います。

そんな長期視野に立って、ここに取り上げたいのがディースクエアード(DSQUARED2)のこの細ベルトです。十年前までは「細ベルト=ウィメンズ」で成立していた世界が信じられないくらい、細いメンズベルトです。とにかく、時代はここまで変わったということです。

アイテム詳細:http://www.modern-blue.jp/Page/GOODSDETAIL-38419



このベルトがちょっと面白いのは、細いけど、厚いということです。これはバンドというよりロープです。ベルトというアイテムに、ロープ、ドローコードみたいなイメージを注ぎ込んでいるところが新しい。でも、バックルや配色は完全にメンズベルトの伝統に則っているわけです。デザイナーの綱渡りでしょうね。概念崩壊させるまで新しいベルトの世界には行かない。その一歩手前で伝統の王道スタイルに則り、少しだけ位置を変えてみる。今のデザイナーたちがやってる仕事のスタンスが、とても象徴的に表されたベルトなんじゃないかな、と僕は思います。




ブラウンバージョン:http://www.modern-blue.jp/Page/GOODSDETAIL-38420




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